どこが特集やねん! 其の四 ザップとロジャーの巻

今回はロジャーです。オハイオはデイトンを本拠地に、今だバリバリ現役である。私のファンク人生に多大な影響を与えた人であり、ブルースなどのファンク以外の音楽への扉を開いてくれた。録音物は、もちろん文句のつけようがないくらい素晴しいのだが、やっぱりライブを観ないと話にならない。ロジャーのライブを観た人はみんな、満足げに幸せそうな顔でニコニコしながら帰っていく。そのライブは黒人音楽のすべてがつまった、そして「そこまでやってくれるかー!」というほどのサービス精神。まさに『これぞブラック・ミュージック・リビューだっ!』と言えるエンターテイメントだ。そして、ここがポイントなのだが、とにかく「楽しい」「ほのぼのする」ライブだ。私なんか、大阪で2回公演の時、1回目終了後、友達を帰らせて2回目のチケットを買って一人で観たほどだ。是非一度、そのライブを体験してください。

ロジャーを中心とするザップのグループ名は、テリー・トラウトマンの愛称から付けられたそうだ。ライブやレコーディングを始めとする、ほとんどの仕事をトラウトマン・ファミリーでやってしまう。そのファミリーの会社である、トラウトマン・エンタプライズは不動産業もやっている。金儲けのためではない。ライブやレコーディングの収益で、デイトンの空き地や空き家を購入して、建築、補修した後、格安で黒人に販売しているのだ。しかも、ザップのメンバー自らが休日には作業をしているという。それも、月平均25ステージ、1年のうち300日がロードに出ているというスケジュールの中でだ。成功した黒人としての義務を実践しているロジャーを私は心から尊敬している。
※このページはロジャーが亡くなる前に公開しました。一部そのままの表現をしている箇所がありますことをご了承ください。

Pick Up

FREEDOM / ROGER AND THE HUMAN BODY (75年)

アルバムにさきがけリリースされたロジャー&ヒューマン・ボディのシングル。後にザップで再演される曲だが、こちらの方がいなたく泥臭い。必聴。

MORE BOUNCE TO THE OUNCE / ZAPP (80年)

ジョージ・クリントンがデイトンでライブをした時に、その前座をしたのがきっかけで、メジャーデビューすることになったザップの記念すべきファースト・シングル。ブーツィーを共同プロデュースに据えたこの曲はビルボードのR&Bチャートで2位を記録した。エレクトロニクスを導入しながらも、このクールで重たいファンクネスはディスコに席巻されかけていた音楽シーンに与えた衝撃は大きい。ロジャーの、メジャーでのキャリアの第一歩になった重要作。

THE NEW ZAPP IV U / ZAPP (85年)

ある意味でこのアルバムと『アンリミテッド』が、ロジャーの音楽の完成型ではないだろうか。自身のルーツであるブルースを始め、ジャズ、ゴスペルなど全ての黒人音楽を飲み込んだ、ザップ流ファンクだ。ファーストの衝撃以降、あちこちで模倣されたサウンドに対する、本家本元の回答といえるだろう。やっぱり格が違います。全曲、捨て曲なし。

I WANT TO BE YOUR MAN / ROGER (87年)

ソロ3作目『アンリミテッド』からの第一弾シングルで、最大のメジャーヒット。また、私の人生に衝撃を与えた一曲です。甘ったるいスロー・バラードが苦手な私が、この曲を聴いた時は、脊髄を電流が走りました。『アンリミテッド』もこれまた全曲、捨て曲なし。JBの『パパのニューバッグ』のカバーも最高で、「カバーちゅうのは、こうやるんだよ諸君」という出来です。これから聴いてみようかな、と思っている方はザップの4枚目とあわせて是非聴いてみてください。

COMPUTER LOVE / ZAPP (85年)

ロジャーお得意のスローバラードの傑作。でも、決して甘くならず、あくまでクール。ザップの4枚目に収録で、これはプロモ盤のエクステンディッド・バージョン。私も大好きな1曲です。この切ない曲に片思い中の人は、ほろっとくるでしょう。

MAKE YOU SHAKE IT / THE HUMAN BODY (84年)

新生ヒューマン・ボディの、1枚目のアルバムのタイトル・トラック。ロジャーとオハイオ・プレイオーズのキーボーディスト、ビリー・ベックのプロデュース。そのシンセ・ベースがめちゃかっこよくて、気持ちいい。強烈にかっこいいボーカルも最高です。この盤はプロモ盤でB面にはエディット・バージョン収録。80年代ファンクを代表する1曲。

ZAPP名義のアルバム

ZAPP 80年

ブーツィーを共同プロデューサーに迎えたメジャー第一弾。でも、サウンドは全然P-ファンクじゃなくて、正統派オハイオ・ファンクだ。

ZAPP II 82年

作りはファーストの延長線上だが、ドゥー・ワップ風の曲があったりして、ロジャーのふところの深さがわかる、これまた楽しいアルバムだ。ファンクというとどうしても、リズム重視になりがちだが、ロジャーはボーカルやハーモニーに関しても超一流だ。

ZAPP III 83年

『ハートブレイカー』『アイ・キャン・メイク・ユー・ダンス』収録。自らのルーツはブルースだと語るロジャーのハープが聴ける。本当に何でもできるという感じ。

ZAPP VIBE 89年

『オー・ベイビー・ベイビー』『ファイアー』収録。

Roger名義のアルバム

INTRODUCING ROGER / ROGER AND THE HUMAN BODY (76年)

このヒューマン・ボディは84年に発売されるグループとは別物。これはまぎれもなくザップの前身だ。すでに60年代から、ロジャー&ヒューマン・ボディとして活動していたロジャーが、自費でリリースし、しかもオハイオの3つの町でしか売らなかったという幻の1枚だ。もちろん私も再発で始めて聴いたのだが(写真も再発CDの物)80年にメジャー・デビューしてからのザップとは一味違った音が聴ける。アナログ、CD共に再発あり。

THE MANY FACETS OF ROGER 81年

ザップのファーストが結構売れた時点では、ブーツィーがらみという事でP-ファンク一派と勘違いされていたり、エレクトロ・ファンク系の"新人"と思われていたところが、少なからずあったかもしれない。それをロジャーは、このソロ・アルバムの1枚目で黙らせた。ポット出の新人とはわけがちがう。格がちがう。『悲しいうわさ』『ソー・ラフ、ソー・タフ』収録。

THE SAGA CONTINUES... 84年

ここらあたりまでは、ソロ名義とザップ名義で、わりと明確にわけていたようだ。『イン・ザ・ミックス』などは、スクラッチが入ってたりして当時にしては斬新だったと思う。ルーツと新しい物をミックスする感覚は素晴しい。最近のヒップホップ・ソウルやR&Bを、好んで聴いている方は、是非聴いてみてほしい。メイシオ・パーカー参加。『ミッドナイト・アワー』収録。

UNLIMITED ! 87年

あの内容の濃いザップの4枚目の後に、このクオリティのアルバムをリリースしてしまうロジャーは凄いとしか形容できない。駄曲なしの全11曲である。このアルバム発表当時、そこそこ活躍していた黒人アーティストで、10年後に残っているのはプリンスとロジャーだけだと言った人がいたが、正にそれに近い状況になった。初の全米NO.1になった『ウォナ・ビー・ユア・マン』と『パパのニュー・バッグ』収録。

Rogerのプロデュース作品

INITIAL THRUST / DICK SMITH 83年

ロジャーは83年~85年にかけて、かなりの数のアーティストをプロデュースしている。ロジャー・ファミリーをプロデュースする時は、ファミリー総出でバックアップする。それに加えてこの盤では、バーニーウォーレル、メイシオ・パーカー、シュガー・フットなどがサポート。名盤です。

THE THISTLE / JESSE RAE 83年

元スペース・カデッツのスコットランド人。バーニー・ウォーレル、マイケル・ハンプトンなどが参加。

SUGAR KISS / SUGAR FOOT 87年

これもファミリー総出でバックアップ。『ファイアー“85”』であの名曲を再演。

BAD BOBBY GLOVER / BOBBY GLOVER 84年

ロジャー&ヒューマン・ボディの頃からのメンバー、ボビー・グローバー唯一のソロ。その歌唱力は今さら言うまでもない。ボビーがいるからこそのトーク・ボックスである。メイシオ・パーカー参加。再発CDあり。

MAKE YOU SHAKE IT / THE HUMAN BODY 84年

オハイオ・プレイヤーズのビリー・ベックら、3人の男性ボーカルを中心にした、基本的にはボーカル・アルバムだ。でも、そうならないのが、ロジャーの凄いところ。超名盤。残念ながら再発なし。

COSMIC ROUND UP / HUMAN BODY 85年

すでにビリー・ベックは抜けているが、代わりにシャーリー・マードックの旦那、デイル・ディグロウが中心になってがんばっている。音的にはザップの4枚目にかなり近い。再発CDあり。

SOMETHING NEW / NEW HORIZONS 83年

これもボーカル・グループで、音的にはザップ色が濃い。バーニー・ウォーレル、メイシオ・パーカー参加。

GONNA HAVE BIG FUN / NEW HORIZONS 84年

1枚目よりはザップ色は抑えられている。シュガー・フット参加。再発は、1枚目と2枚目を編集した日本盤CDが出ている。

SHIRLEY MURDOCK ! / SHIRLEY MURDOCK 85年

シャーリー・マードックのデビュー盤。ヒューマン・ボディの『アズ・ウイ・レイ』を再演、大ヒット。

A WOMAN'S POINT OF VIEW / SHIRLEY MURDOCK 88年

やっぱり、ゴスペルをやってた人の歌唱力は聴いてて安心感がある。ザップの『スペンド・マイ・ホール・ライフ』を再演してますが、これがまた素晴しい

LET THERE BE LOVE ! / SHIRLEY MURDOCK 91年

この当時、歌手を目指す黒人の女の子が目標にするのは、ホイットニー・ヒューストンかシャーリー・マードックのどちらかだったらしい。日本ではわからないが、それが本国での彼女の「格」だ。

12インチ・シングル - 試聴できるものもあります -

I HEARD IT THROUGH THE GRAPEVINE / ROGER 81年

マービン・ゲイの『悲しいうわさ』のカバー。プロモ盤、B面は『ソー・ラフ、ソー・タフ』収録

DO IT ROGER / ROGER 81年

『ドゥー・イット・ロジャー』のプロモ盤。この曲が、ライブで盛り上がるんです。B面は『ブルー(ア・トリビュート・トゥ・ブルース)』

I CAN MAKE YOU DANCE / ZAPP 83年

A面にロング・バージョン、B面にショート・バージョン収録。

HEARTBREAKER / ZAPP 83年

プロモ盤。B面に『タット・タット(ジャズ)』収録。

GIRL, CUT IT OUT / ROGER 84年

エクステンド・ミックス、フィーチャリング・シャーリー・マードック。B面は『ソー・ラフ、ソー・タフ』

IN THE MIX / ROGER 84年

プロモ盤。A面がLPバージョン、B面がシングル・バージョン。

MIDNIGHT HOUR / ROGER 84年

ウィルソン・ピケットのヒット曲のカバー。これはめちゃくちゃ好きです。プロモ盤。A面がLPバージョン、B面がパート1(ショート・バージョンです)。

ITCHIN' FOR YOUR TWITCHIN' / ZAPP 85年

A面がLPバージョン、B面がリミックス・バージョン。プロモ盤。

COMPUTER LOVE / ZAPP 85年

45回転マキシシングル。エクステンディッド・バージョン、リミックス、インストゥルメンタルの3バージョン収録。

IT DOESN'T REALLY MATTER / ZAPP 85年

ロングバージョン。B面はジャ・レディ・トゥ・ロック収録。プロモ盤。

RADIO PEOPLE / ZAPP 86年

これも大好きで、すっごく楽しくなる曲です。A面がLPバージョン、B面にリミックス/エディット・バージョンと『イッチン・フォー・ユア・トゥイッチン』のリミックス・バージョン収録。プロモ盤

I WANT TO BE YOUR MAN / ROGER 87年

A面にエクステンディッド・バージョンと7インチ・バージョン。B面に『リアリー・ウォナ・ビー・ユア・マン』のリミックス/エディット・バージョンと『バッデスト・ギタリスト・アラウンド』収録。

THRILL SEEKERS / ROGER 87年

A面がエクステンディッド・リミックス・バージョン。B面にリミックス/エディット・バージョンと『祝のための楽曲(1918年5月30日)』収録。

PAPA'S GOT A BRAND NEW BAG / ROGER 88年

言わずと知れた、ジェイムズ・ブラウンの『パパのニュー・バッグ』。A面がリミックス・バージョン。B面にリミックス/エディット・バージョンと『ソー・ラフ、ソー・タフ』収録。

IF YOU'RE SERIOUS / ROGER 88年

A面がリミックス・バージョン。B面にリミックス/エディット・バージョンと『プライヴェイト・ラヴァー』収録。

OOH BABY BABY / ZAPP 89年

ミラクルズ65年のヒット曲のカバー。A面が12インチ・バージョン。B面にLPバージョンとインストゥルメンタル・バージョン収録。

OOH BABY BABY / ZAPP 89年

LPバージョン。プロモ盤

FIRE / ZAPP 89年

オハイオ・プレイヤーズの代表曲。A面が7インチ・バージョンとインストゥルメンタル・ジャズ・バージョン。B面がエクステンディッド・バージョン、LPバージョンと、『ジェイク・E・スタンスティル』を収録。

I PLAY THE TALK BOX / ZAPP 89年

A面がレディオ・エディットとLPバージョン。B面がエクステンディッド・バージョン、ジェイクミックスとダブ・ミックスを収録。

MEGA MEDREY / ZAPP 93年

『ドゥー・イット・ロジャー』『ソー・ラフ、ソー・タフ』『悲しいうわさ』など9曲を、ロジャー自らがメドレー風にリミックスしたもの。3バージョン収録。

LOVE T.K.O / FREEDOM / THE HUMAN BODY 93年

特筆すべきことはB面に『FREEDOM』が収録されているということ。 当時の7インチには当然パート1とパート2はA面B面に分かれて収録されてるし、アルバムはパート1がフェードアウトして、続けてパート2がフェードインで始まるという構成になっている。ところがこの12インチはパート1と2が完全に繋がった1曲になっている。

客演・その他

WANNA MAKE LOVE / SUN 76年

オハイオ・ファンクの重要グループ、サンのファースト。タイトル・トラックで、ロジャーとレスターが客演。アルバムとしても大傑作。必聴です。再発CDあり。

FEEL THE MUSIC / DAYTON 80年

サンを抜けた、ショーン・サドリッヂら3人が中心となって結成されたグループ。『ラヴ・ユー・エニーウェイ』をロジャーがプロデュース。収録の『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』は名曲。この盤も必聴です。再発CDあり。

WEST COAST POPROCK / RONNIE HADSON AND THE STREET PEOPLE 82年

SO RUFF, SO TUFFのカバー。 このカバーに対するRogerのアンサーがCalifornia Love / 2pacでのRogerの客演。映画『サウス・セントラル』(オリバー・ストーン)のサントラで聴けます。

Express Yourself / Roger and Fu-Sehniekens 93年

アダムスファミリー2のサントラに収録されてます。

MIX

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