
どこが特集やねん! 其の八 ファンク・ディーヴァの巻
今回はファンクの歌姫たちということで、女性が主にボーカルをとっているものを取り上げます。そのひと自信がソロでやってるものから、あるグループでリード・ボーカルをやってるひとまで、とにかく女性ボーカル絡みという感じでピック・アップしました。最近はアメリカ、イギリスはもとより、日本でもR&B系の女性シンガーがほんとにたくさん出てきました。この特集を作って、私自信もそれらのシンガーと、ここで取り上げた女性達の違いを再確認することができました。これはどちらが優れているかとかいう事ではなく、やはりファンク・ミュージックは、ボーカルのファンク度も勿論重要ですが、すぐれたバンドがあって初めて完成されるものだと思います。今活躍している女性達はあくまで優れたボーカリストだということだと思います。私が取り上げた女性達は優れたボーカリストであることは勿論、彼女達の意思がどうであったかはわかりませんが、まぎれもないファンカティーア達です。
★音源はYouTubeでタイトルとアーティスト名で検索してみてください。
BETTY DAVIS

BETTY DAVIS 73年
マイルス・デイヴィスのファンク魂を呼び覚ました女性、そしてジミ・ヘンドリクスの親友。マイルスとジミを引き会わせたのも彼女だ。その衝撃のデビュー盤だ。まず豪華な参加ミュージシャンが凄い。プロデュースがスライ&ファミリーストーンのドラマー、グレッグ・エリコ。ベースにラリー・グラハム、G.C.S.からはほかにもハーシャル・ケネディ(Key)とパトリース・バンクス(Vo)、ボーカルでポインターシスターズ、タワー・オブ・パワーのメンバーも参加している。これでどういう音かは想像できるが、それに全く負けていない彼女のボーカルが凄い。このメンバーは彼女の交友関係で自然と集まってきた仲間達だ。エリック・クラプトンのプロデュースを断わっての、会心のデビュー盤です。必聴。

THEY SAY I'M DIFFERENT 74年
この2枚目ではプロデュース、ソング・ライトをすべて彼女がやってます。強烈にシャウトするボーカルはちょっとエグイくらいですが、めちゃめちゃかっこいいです。まともな音楽教育もうけず、楽器もできない彼女がここまで素晴しいアルバムを創ってしまえるのは、ファンクはやっぱり魂の音楽だという証明です。参加ミュージシャンはコーデル・デュプリー、ピート・エスコベドなど。ファンクが好きだという女性の方には、デビュー盤とあわせて是非聴いてほしい盤です。彼女の最高傑作。

NASTY GAL 75年
全2作もそうなのですが、各楽器の音がめちゃくちゃいいです。HIFIという意味ではなく、これぞ70年代という感じの音です。ベティのボーカルは行くところまで行ったという感じで、そのエグさ、毒々しさはピークに達してます。力強さを通り越したベティの歌は本当の意味でワン・アンド・オンリーです。
RUTH COPELAND

SELF-PORTRAIT 70年
インヴィクタスからのデビュー盤。何を置いてもまず言わなければいけないのは、このアルバム、バックがファンカデリックだと言うことです。同じ年にインヴィクタスからパーラメントのファーストが出てますので、ほんとはパーラメントといった方がいいのでしょうが、音的にはファンカデリックです。ただ、それ系の曲というのは、このアルバムには2曲ほどで、後は当時のシンガー/ソングライター系の曲です。割とカバーも多い「ある晴れた日に(蝶々夫人)」をやってるんですが、重要なのはファンカのメンバーがやってるという事です。彼等のリーダー作では考えれませんもんね。パーラのファーストでもやってる「サイレント・ボートマン」もやってます。

I AM WHAT I AM 71年
パーラメントのファーストでは、クリントンと共にプロデュースにクレジットされた彼女の2枚目です。これは素晴しいです。かっこいいです。全作では数曲だったファンク・ロックな曲の割合が増えて、演奏だけ聴くとほとんどファンカデリックです。ゴスペル調の曲も素晴しいです。パーラメントのファーストやファンカデリックの3枚目くらいまでが好きな方は是非聴いてみてください。1・2枚目共にアナログ・CDで再発されてます。
LYDIA PENSE (COLD BLOOD)

COLD BLOOD 70年
タワー・オブ・パワーと並んでベイ・エリア・ファンク・ロックの代表格とされるバンドだが、タワー・オブ・パワーがバンドとしての匂いが強いのに対して、こちらはあくまでリディア・ペンスが主役だ。サンフランシスコ・レコードからの第一段アルバムとなるのが、このコールド・ブラッドのデビュー盤である。ブルース/R&B色が強いが、タイトなバンドの演奏とともに、非凡なリディアのボーカルが聴ける。

SISYPHUS 71年
サンフランシスコ・レコードからの2枚目。さらにタイトになったバンドと強烈にシャウトするリディアのボーカルがかっこいいです。ラテンな曲もやってます。ポインター・シスターズが客演してます。

FIRST TASTE OF SIN 72年
リプリーズへ移籍してのサード・アルバム。大幅なメンバー・チェンジをしてますが、それが原因かどうかはわかりませんが、これは傑作です。プロデュースにダニー・ハサウェイを向かえ、リディアものびのびしてるようで、素晴しいです。もっと彼女の評価は高くてもいいと思うのは私だけでしょうか。ゲストでコーク&ピート・エスコヴェドが客演してます。ラテン・ファンク・ロックの傑作「ダウン・トゥー・ザ・ボーン」収録。この曲はかっこいいです。この一曲の為にだけでもこのアルバムを買う価値あり。

THRILLER! 73年
前作と並び傑作とされる4枚目。ファンク・トラックは前作を凌ぐかっこよさです。これは、後にグラハム・セントラル・ステイションに参加するドラムのゲイロード・バーチの功績が大きいのではないでしょか。スティービー・ワンダーのカバー「ユー・アー・ザ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ」が抜群の出来でかっこいいです。この盤は再発のCDが出てますので是非聴いてみてください。必聴盤。

LYDIA 74年
「スリラー!」のように強烈にかっこいい一曲というのはないのですが、まとまったファンク・アルバムです。ドラムは前作と同じくゲイロード・バーチ、ゲストでメンフィス・ホーンズが参加してます。この盤も再発CDが出てます。

LYDIA PENSE AND COLD BLOOD 76年
2年以上のブランクの後、ABCに移籍しての6枚目、そして最後のアルバム。リディアはソロで活動を続けますが、あんまりぱっとしなかったようです。で、このアルバム、予想に反してというか、結構いいです。私もあんまり期待してなかったんですが、ドラムとベースが黒人になって、リズムがタイトでかっこいいです。再発は出てませんが、中古屋さんではかなり安いと思いますので、見つけたら買ってみてください。あと、CDでベスト盤が出てたと思いますので、とりあえずという方はベストを買われてみてはいかがでしょうか。
BRIDES OF FUNKENSTEIN

FUNK OR WALK 78年
スライのところで歌っていたドーン・シルヴァとリン・メイブリー(スライのいとこ)からなる、P-ファク直系のグループ。もちろんバックはP-ファンク総出演という感じで、この年ジョージ・クリントンがプロデュースした7枚のうちの1枚ということで、内容も悪いはずがないです。収録の「ディスコ・トゥー・ゴー」はラバー・バンドやオール・スターズがキメに使っているフレーズで、ライブにいかれた方にはおなじみのフレーズです。P-ファンク好きは必聴!

NEVER BUY TEXAS FROM A COWBOY 79年
ブライズの2枚目ですが、すでにリンは抜けていて、新メンバーが2人加わってます。感じとしては前作の延長線上なのですが、この頃のジョージ・クリントンの勢いを物語るような出来です。個人的には彼女たちのボーカルが何ともP-ファンク的というか、クールなファンクネスを感じます。P-ファンクのライブにも女性ボーカルは不可欠ですもんね。エディのギターがかっこいいです。
PARLET

PLEASURE PRINCIPLE 78年
ブライズのファーストと同じ年にリリースされたファースト。これも完成度の高いアルバムで、ジョージ・クリントンの凄さを思い知らされます。音的には、この年にリリースされた「ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ」的な音と言うんでしょうか。私はどちらかというと初期ファンカが好きで、この年代のパーラ/ファンカの本体は、実はあんまし好きじゃないんです。でもブライズやパーレットはボーカルのかわいさというか、P-ファンク的キャッチーなところが大好きです。

INVASION OF THE BOOTY SNATCHERS 79年
パーレットの2枚目がリリースされたこの年も、P-ファンク関連のアルバムは全部で6枚もリリースされている。2年間でこれだけの数をプロデュースしてハズレがないというのは、正にクリントン恐るべしです。今聴いても新鮮、というよりはこういう盤があれば新人の新譜なんて聴く必要ないような気になってしまいます。それにしてもジョージ・クリントンのコーラス・ワークは本当に素晴しいです。

PLAY ME OR TRADE ME 80年
パーレットの3枚はどれも甲乙つけ難い出来で、どれがおすすめととうよりも出来れば全部買って聴いてほしいくらいです。3枚ともCDで再発されてますので、P系がお好きな方は是非とも聴いてみてください。ベスト盤も出てますので、まずはベスト盤からでも。
LIN COLLINS

THINK(ABOUT IT) 72年
72年といえばJB'sの「フード・フォー・ソート」が発売された頃で、このアルバムとどの程度メンバーが重複しているのかは未確認なんですが、とにかくかっこいいです。収録の「シンク」はレア・グルーヴの時はクラブでかかりまくり、また、サンプリングもされまくったファンク・クラシックです。もちろん他の曲も素晴しく、レディス・ファンク・アルバムの一つの完成型ではないでしょうか。この盤はファンク好きの方は必聴というよりも「義務」ではないでしょうか。アナログ・CD共に再発あり。

CHECK ME OUT 74年
数年前のレア・グルーヴ/ジャズ・ファンク・ブームから、メシオ・パーカーやフレッド・ウェズリーらが来日してライブをするなかで、私の記憶ではJB's名義で来たのは一回だけだったと思います。その時にリン・コリンズが一緒に来ていてたのですが、それはもう素晴しかったです。「シンク」と「イフ・ユー・ドント・ノウ・ミー・バイ・ナウ」の2曲だけだったのですが、人間の声のパワーの凄さとでも言うんでしょうか、文章では表現できないほど強烈でした。再発はアナログ・CD共にで出てますが、P・ヴァインのCDにはボーナス・トラックで7インチの曲が8曲入ってます。これも必聴盤。

JACKSON SISTERS / JACKSON SISTERS 76年
これは説明の必要はないでしょう。レア・グルーヴ/ファンク・クラシックの1枚。ジョニー・ブリストルがプロデュースした曲をはじめ、73年~74年にリリースされたシングルを集めたアルバムで、やはり「ミラクルズ」につきるのではないでしょうか。再発はアナログ、CD共に出てます。必聴です。

JU-PAR UNIVERSAL ORCHESTRA / MOODS AND GROOVES 76年
このグループについてはあまり知らないのですが、かっこいいです。レア・グルーヴ/ダンス・クラシックな盤なのですが、ラテン・カリプソ系の感じというのでしょうか。ボーカルがめちゃくちゃキュートでかっこいいのですが、それにもましてトラックが最高にかっこいいです。クラヴィネットがたたまらなくファンクしてます。

LALOMIE WASHBURN / MY MUSIC IS HOT 77年
これもかっこいいです。これ以上やるとディスコになってしまうという、ぎりぎりのところでクラブ・クラシックという感じです。他に、もう1枚アルバムがありますが、そっちはもひとつレアです。

GODMOMA / HERE 81年
ブーツィー・コリンズ・プロデュースの3人組。バックはラバー・バンド&ホーニー・ホーンズという感じで、ほとんどラバー・バンドの音です。ボーカルはP-ファンク・マナーで、ラップ調の曲があったりとバラエティに富んでいて、完成度はかなり高いです。このへんの盤を聴いていると、この頃のP-ファンクの勢いがいかに凄かったかがわかります。

MARVA WHITNEY / IT'S MY THING 69年
67年から70年までヴィッキ・アンダーソンの後釜としてジェイムス・ブラウンのショーを勤める。そのあいだに3枚のアルバムをリリースしている。これはその2枚目。アイズレーの曲に対するアンサー・ソング『イッツ・マイ・シング』がかっこいいです。線の細い声でも、十分ファンク出来るということを、ほぼ完成されつつあったJB'sの演奏にのって証明してます。オジナル盤は腰が抜けるほど高いので再発盤をおすすめします。 オーディオサンプルはこのアルバムに収録されたものではなく、Tネックから7インチでのみリリースされた曲です。

VICKI ANDERSON / MESSAGE FROM A SOUL SISTER
残念ながらヴィッキはアルバムをリリースしていないので、その音はシングルでしか聴くことができず、その盤も珍しく、高いです。でも個人的にはリン・コリンズやマーヴァ・ホイットニーより好きです。ここに載せた盤は、シングルを編集した再発盤です。ほかにはPヴァインのボビー・バードの編集盤に数曲、コンピレーションなどにも入ってたりしますので、探して是非聴いてみてください。とにかくかっこいいです。